剣客商売 11 勝負 の中というより、全部のなかでこれが いちばん好きかもしれない。 生まれつきの顔ゆえに、暗い人生を生きなければならなかった 男にかける、妾腹の三冬の思いやりも届かず、逐電、 再会したときは、落ちぶれはて、追われる身の岩田勘助。 健康な三冬は、産後20日で買い物にでる。 本性寺に詣でたばかりに、事件にあうのだが、このどこに行った、 あっちに回ったという、偶然が、なにかに遭遇するのです。 たら、れば、といいますが、いまの今やはり一瞬の油断が事故に つながることを思えば、めにみえないなにかが、働いておるの でしょうか。 この偶然や、みかけで人を判断する人間のおろかさが、 池波氏のおおきなテーマになっているようにおもいます。 帰宅して、事件の様子を聞かせる夫に、ふりむかぬ三冬。 炊事の匂いもなく、向こうをむいたままの妻。 苛立つ大治郎に、振り向いた三冬の両眼から、ふつふつと ふきこぼれるあついもの。圧巻である。 一度よんでみてくださいませ、おすすめいたします。 |
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